新規事業や開業で、ロゴより先に決めたいこと

新規事業や店舗・医院の開業で、ロゴやホームページを先に決めていませんか。デザインの前に考えておきたい「どんな事業として選ばれたいのか」という問いについて書きました。

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新しい店を始める。会社をつくる。医院を開業する。新規事業を立ち上げる。

そうなると、急に決めることが増えます。

名前、ロゴ、内装、ホームページ、看板、名刺、SNS。開業日が決まっていると、それぞれに締切もあります。

僕は30年以上デザインの仕事をしてきたので、ロゴやWebサイトの相談もたくさん受けてきました。

でも、新しい事業の相談で、最初からロゴの形や色を決めることは、ほとんどありません。

その前に知りたいことがあるからです。

「どんな感じにしますか」の前に

デザインの打ち合わせでは、こんな言葉がよく出てきます。

「親しみやすい感じで」 「少し高級感を出したい」 「シンプルで、おしゃれにしたい」

もちろん、それも大切です。

でも僕は、そのあと少し意地悪な質問をします。

誰にとって親しみやすいんでしょう。

なぜ高級感が必要なんでしょう。

そのおしゃれさは、来てほしいお客さんにとって必要なんでしょうか。

こう聞いていくと、デザインの話をしていたはずなのに、いつの間にか事業の話になっていきます。

ロゴは、事業そのものではありません。

そこにある事業を、見える形にするものです。

だから、何を形にするのかが見えていないままロゴをつくると、最後は「好きか嫌いか」の話になってしまいます。

同じ業種でも、つくるものは同じではない

たとえば、歯科医院を開業するとします。

設備や診療内容だけを見れば、近くの医院と大きな差がないこともあります。

それでも、どんな医院をつくるかは同じではありません。

小さな子どもと親が安心して通える場所にしたい医院もあれば、できるだけ長く自分の歯で食事を楽しめるように支えたい医院もあります。

痛くなってから行く場所ではなく、日常的に通う場所にしたいと考える先生もいるでしょう。

「どんな医院として選ばれたいのか」が違えば、当然、名前も変わります。

空間も変わる。

ホームページに書く言葉も変わります。

スタッフの接し方や採用する人まで変わるかもしれません。

ロゴを考える前に、その医院が患者さんにとってどんな存在なのかが見えている方が、その後の判断はずっとしやすくなります。

ターゲットを決めるだけでは、少し足りない

新規事業の話になると、「ターゲットを決めましょう」とよく言われます。

40代女性。共働き世帯。子育て中。経営者。富裕層。

こういう分類は役に立ちます。

でも、僕はそれだけでは少し足りないと思っています。

同じ40代でも、できるだけ早く済ませたい人と、時間をかけて相談したい人では、選ぶ店が違います。

安い方がいい人もいれば、多少高くても「この人なら任せられる」と思えることを大事にする人もいます。

僕が知りたいのは、年齢や職業だけではなく、その人が何を大切にしているかです。

どんなことで困っているのか。

どうなりたいのか。

どんな時間を過ごしたいのか。

そして、自分たちはその人に何ができるのか。

そこまで観ていくと、「誰を集客するか」という話から、「誰の役に立ちたいのか」という話に変わってきます。

開業前は、つい足したくなる

開業準備中は、不安です。

だから、つい足したくなります。

このメニューもあった方がいい。このサービスもあった方がいい。この層にも来てもらえるようにしよう。

選択肢を増やせば、お客さんも増えるような気がします。

でも、何でもできることと、選ばれることは同じではありません。

むしろ事業の輪郭をはっきりさせるには、「何をやらないか」を決めた方がいいことがあります。

どんなお客さんを追わないのか。

どんな価格競争には入らないのか。

どんな仕事は受けないのか。

どんな売り方はしたくないのか。

やらないことを決めるのは、可能性を狭めるためではありません。

自分たちが大切にしたいものを、見失わないためです。

僕がデザインの前に話を聴く理由

ロゴの相談なのに、なぜそんなことまで聞くんですか、と言われることがあります。

僕が聞きたいのは、デザインの好みだけではありません。

なぜ、この仕事を始めようと思ったのか。

今まで、どんな仕事をしてきたのか。

どんなお客さんと仕事をしているときが楽しいのか。

どんな働き方はしたくないのか。

数年後、どんな状態になっていたいのか。

一見、ロゴとは関係なさそうな話の中に、その事業らしさが隠れていることがあります。

僕の仕事の進め方を「聴く・問う・編集する・動かす」と言っているのも、そのためです。

まず話を聴く。

当たり前だと思っていたことを問い直す。

バラバラだったものを編集する。

そして、名前や言葉、デザイン、Web、サービスとして実際に動かしてみる。

デザインは最後の飾りではなく、その途中にあります。

まだ決まっていない時期だから、考えられることがある

開業や新規事業の立ち上げでは、「早く決めないと」と焦ります。

でも、まだ何も決まっていない時期は、見方を変えれば、一番自由に考えられる時期でもあります。

名前を決める前に。

ロゴを決める前に。

ホームページをつくる前に。

一度だけ、こんなことを考えてみてください。

「この事業は、誰にとって、どんな存在になりたいんだろう」

ここが見えてくると、名前も、価格も、サービスも、デザインも、少しずつ同じ方向を向き始めます。

もし、まだ考えがまとまっていなくても問題ありません。

むしろ僕は、何も決まっていない段階の話を聞くのが好きです。

そこには、まだどんな形にもできる余白があるからです。

「自分の事業の場合はどうだろう」と思ったら、一度話してみませんか?

まだ、何を相談すればいいのかまとまっていなくても大丈夫です。

相談してみる