ロゴを変えても、ブランドが変わるとは限らない
「そろそろ、うちもブランディングをしたほうがいいのかな」
そんな相談を受けることがあります。
話を聞いてみると、ホームページが古くなってきた。ロゴを変えたほうがいい気がする。SNSをもっとちゃんとやったほうがいい。会社案内やパンフレットも見直したい。
そんな話が出てきます。
どれも間違ってはいません。
でも僕は、たいていすぐにはロゴやホームページの話をしません。その前に、もう少し違うところを見ます。
なぜなら、ブランディングは「見せ方を変えること」から始まるのではなく、「自分たちは何者なのかを見直すこと」から始まると思っているからです。
ブランディングという言葉から、ロゴやデザインを思い浮かべる人は多いと思います。
もちろん、デザインは大切です。
僕自身、30年以上デザインの仕事をしてきたので、その力はよくわかっています。
ただ、デザインはブランドそのものではありません。
たとえば、昔から地域で続いている飲食店があったとします。
最近お客さんが減ってきたので、若い人にも来てもらおうと、ロゴを今風にして、店内をきれいにして、Instagramを始める。
見た目は確かに変わります。
でも、「この店に、わざわざ行きたい理由は何だろう」という部分が以前のままだったら、しばらくするとまた集客の悩みに戻ってしまうかもしれません。
ホームページを作り直しても同じです。
どんなにきれいなサイトを作っても、そこに書かれているのが「高品質です」「丁寧に対応します」「お客様第一です」といった、どの会社にも当てはまりそうな言葉だけなら、結局は他社と比較されます。
比較されれば、最後は価格や条件の話になりやすい。
だから僕は、デザインを始める前に、その会社や店が持っている「意味」のほうを見ます。
ブランディングで最初にやることは、自社を観直すこと
では、何から始めればいいのか。
僕ならまず、
「自分たちは、いったい何を提供している会社なのか」
を観直します。
商品名や業種の話ではありません。
たとえば美容室なら、提供しているのは「髪を切ること」なのか。
歯科医院なら「歯を治療すること」なのか。
工務店なら「家を建てること」なのか。
もちろん、それも提供しています。
でも、お客さんが本当に受け取っているものは、それだけではないはずです。
髪を切ってもらうことで、少し自信を取り戻しているのかもしれない。
子どもが歯医者を怖がらなくなることで、親御さんが安心しているのかもしれない。
家を建てることで、家族のこれからの暮らし方が変わるのかもしれない。
商品やサービスは同じでも、
「何を売っていると考えるか」
によって、ビジネスの見え方は大きく変わります。
僕が「ビジネスの意味を編集する」と言っているのは、こういうことです。
新しい価値をつくらなくてもいいことがある
ブランディングというと、「他社にはない強みをつくらなければ」と考える人も多いです。
そして競合を調べて、あそこより安くしよう。あそこにはないサービスを加えよう。あそこと違うことをやろう、と考え始めます。
これもひとつの方法ですが、僕は少し違う見方をします。
まず競合を見るより、自分たちを見る。
これまで何をやってきたのか。
なぜこの仕事を始めたのか。
どんなお客さんに喜ばれてきたのか。
なぜか繰り返し頼まれることは何か。
お客さんから、どんな言葉をかけられてきたのか。
自分たちにとっては普通すぎて、価値だと思っていないものはないか。
そうやって掘り下げていくと、「新しい強みをつくらなくても、すでに持っていた」ということがよくあります。
ただ、それに気づいていなかった。
あるいは、価値として伝わる形になっていなかっただけです。
自分の会社の価値ほど、自分では見えにくい
ここが、ブランディングの難しいところです。
長く仕事をしているほど、自分たちのやっていることが当たり前になります。
「そんなこと、どこでもやってるでしょう」
「別に特別なことじゃないですよ」
と言われることもあります。
ところが、外から見ると、それがすごく面白かったりする。
以前から僕は、クライアントさんと話をしていて、「そこ、面白いですね」と言うことがよくあります。
すると、「え、そこですか?」と驚かれる。
ブランディングの種は、案外こういうところにあります。
本人にとっては当たり前。
だから、自分では見えない。
僕は、ブランディングの最初の仕事は、何かを付け加えることではなく、すでにあるものの見方を変えることだと思っています。
「誰に売るか」より先に考えたいこと
ブランディングやマーケティングの本を読むと、「まずターゲットを決めましょう」と書かれていることがあります。
それも大切です。
ただ、小さな会社や店舗の場合、僕は必ずしもそこから始めなくてもいいと思っています。
先に、自分たちは何を大切にしたいのか。どんな仕事をしているときが一番いい状態なのか。どんなお客さんと仕事をすると、お互いにうれしいのか。これからどんな会社や店でありたいのか。
そういうことを考えてみる。
すると、「だから、こういう人に来てもらいたい」が後から見えてくることがあります。
自分たちのあり方が見えてくると、誰に届けたいのかも見えてくる。
伝える言葉も変わる。
価格の考え方も変わる。
商品やサービスの組み合わせも変わる。
場合によっては、売り方そのものが変わることもあります。
だから、僕はブランディングが先で、マーケティングはその後だと考えています。
ブランディングは「きれいに見せること」ではない
ブランディングというと、少し格好よく見せることだと思われがちです。
僕はむしろ逆だと思っています。
余計なものを足すより、「自分たちは、本当は何を大事にしているのか」をはっきりさせていく。
そうすると、必要のないものが削れていきます。
やらなくていいサービスが見えてくるかもしれない。
合わないお客さんを追いかけなくてよくなるかもしれない。
価格を必要以上に下げる理由もなくなるかもしれない。
発信する内容にも軸ができます。
ロゴやホームページをつくるのは、その後です。
中身が見えてから形にしたほうが、当然、伝わるものも強くなります。
ブランディングを始めるなら、まずこの質問から
もし今、「うちもブランディングをしたほうがいいのかな」と思っているなら、ロゴやホームページを考える前に、一度こんなことを考えてみてください。
「うちの会社や店がなくなったら、誰が、何に困るだろう?」
単に商品が買えなくなる、サービスを受けられなくなる、という話ではありません。
あなたの会社だから得られていたもの。
あなたの店だから感じられていたもの。
あなたから買うから生まれていたもの。
そこに、そのビジネスならではの意味が隠れているかもしれません。
もうひとつあります。
「お客さんは、うちの商品やサービスを通して、どんな未来を手に入れているのだろう?」
この質問も、ぜひ考えてみてください。
商品の説明では出てこなかった言葉が見つかるかもしれません。
それが、ブランディングの入り口になります。
答えをつくるより、一緒に見つける
とはいえ、自分の会社のことを自分だけで考えるのは、意外と難しいものです。
自分では近すぎるからです。
強みだと思っていたところが、実はそれほど重要ではなかったり。
逆に、なんとも思っていなかった経験やサービスに、大きな価値が隠れていたりします。
僕が経営者さんと話すときも、最初から答えを用意しているわけではありません。
話を聞きながら、「それって、こういう意味ではないですか?」「もし、こっちから見たらどうでしょう?」と視点を動かしていきます。
そうしているうちに、「そうか。自分たちがやっているのは、そういうことだったのか」という瞬間が生まれることがあります。
僕は、そこからブランディングが始まると思っています。
ロゴを変える前に。
ホームページを作り直す前に。
SNSを頑張る前に。
まず、自分たちのビジネスを、少し違う角度から観てみる。
そこから見えてきた価値に、言葉を与え、商品やサービスを整え、価格を考え、伝え方をつくっていく。
ブランディングは、何か格好いいものを外から持ってくることではありません。
すでに自分たちの中にあるものを見つけ、その意味を編集して、伝わる形にしていくこと。
もし、「自分たちの価値が、うまく言葉にできない」「今のホームページが、自分たちらしくない気がする」「価格ではなく、価値で選ばれる会社にしたい」「そもそも、何から見直せばいいのかわからない」。
そんな違和感があるなら、一度お話を聞かせてください。
何を変えるかを決める前に、
そもそも何を変える必要があるのか。
一緒にそこから観ていきます。