「商品には自信があるんです。でも、なかなか売れなくて」
そんな相談を受けると、そのあとによく続く言葉があります。
「もっとSNSをやった方がいいでしょうか」 「ホームページを変えた方がいいですか」 「キャッチコピーが悪いんでしょうか」
もちろん、伝え方は大事です。
でも僕は、すぐにSNSやコピーの話には入りません。
先に、「そもそも、何を伝えようとしているんだろう」と考えます。
伝え方を変える前に、伝えるものを観る
いい商品をつくっている人ほど、その商品の良さをよく知っています。
素材にこだわっている。製法が違う。経験のある職人がつくっている。手間も時間もかけている。
だから、「ちゃんと知ってもらえれば、わかってもらえるはず」と思う。
ところが、お客さんは、その商品のつくり手ではありません。
「職人が一つひとつ手づくりしています」と言われても、それが自分にとって何がいいのかまで見えなければ、買う理由にはなりにくい。
そこで、もっと詳しく説明しようとする。
ホームページには、素材の話、製法の話、会社の歴史、技術力。伝えたいことがどんどん増えていきます。
でも、説明が増えれば増えるほど、何が一番大事なのかわからなくなることもあります。
そんなとき、問題は「伝え方」ではなく、「何を価値として伝えるのか」がまだ整理されていないのかもしれません。
「それを買った人は、そのあとどうなるんですか」
商品やサービスの相談をしているとき、僕が聞くことがあります。
「それを買った人は、そのあと、どうなるんですか」
すると、商品説明とは少し違う言葉が出てきます。
「朝の準備が楽になります」 「安心して任せてもらえるようになります」 「長く使えるので、買い替えなくて済みます」 「人に見せたくなるみたいです」
僕は、こういう言葉の方に興味があります。
たとえば美容室なら、技術の高さそのものより、「朝、自分で扱いやすい髪になること」を喜んでいるお客さんがいるかもしれません。
伝統工芸品なら、手仕事であることだけでなく、使うほど馴染んでいくことや、修理しながら長く持てることに価値を感じる人もいるでしょう。
特徴は大事です。
ただ、特徴そのものが価値なのではなく、その特徴によってお客さんに何が起きるのか。そこまで観て初めて、伝えるべきことが見えてきます。
売れない原因が、商品ではないこともある
売れないと、商品を変えたくなることがあります。
新商品をつくる。機能を増やす。メニューを増やす。セットにする。値段を下げる。
必要なこともありますが、その前に一度、商品とお客さんの関係を観直してみた方がいい場合があります。
以前、製造業の事業を一緒に観たときも、商品そのものの問題というより、「誰に、どう届けるか」という事業の構造に大きな余地がありました。
それまでとは違う相手に、違う届け方をする。
商品を大きく変えなくても、事業の意味は変わります。
誰に売るのか。どう組み合わせるのか。どこで売るのか。どういう場面で使ってもらうのか。
ここを観直すと、「どう宣伝するか」より先に考えることが、たくさん出てきます。
言葉が決まらないのは、コピーの問題ではないかもしれない
ホームページをつくる仕事でも、同じことがあります。
キャッチコピーを何案つくっても、どうもしっくりこない。
「品質を大切にしています」 「お客様に寄り添います」 「一人ひとりに最適なサービスを」
間違ってはいません。でも、他の会社でも言えそうです。
こういうとき、言葉のセンスだけで解決しようとしても、なかなか決まりません。
誰に届けたいのか。
その人は、今どんなことで困っているのか。
自分たちは、その人をどう変えられるのか。
なぜ、それを自分たちがやるのか。
そこが見えてくると、言葉はあとからついてくることがあります。
僕がロゴやWebをつくる前に話を聴くのは、そのためです。
言葉をつくる前に、その事業の意味を一緒に観ます。
発信を増やす前に、少しだけ立ち止まる
売れないと、「もっと知ってもらわないと」と思います。
SNSの投稿回数を増やす。広告を出す。動画を始める。SEOを強化する。
それ自体が悪いわけではありません。
でも、まだ何を伝えるかがぼんやりしたまま発信を増やしても、届く量が増えるだけで、選ばれる理由まで強くなるとは限りません。
そんなときは、発信を増やす前に、今のお客さんを少し観てみてください。
なぜ買ってくれたのか。
何を喜んでくれたのか。
なぜまた来てくれたのか。
逆に、なぜ選ばれなかったのか。
そこに、自分たちではまだ言葉にできていないものがあるかもしれません。
「伝え方が悪い」と思っていたけれど、実はその前に、「自分たちは何を売っているのか」がまだ見えていなかった。
僕は、そういうところから一緒に観直す仕事をしています。